2017年9月16日土曜日

各分野の生い立ちがわかる学問の歴史の本 ー法学、経済学、政治学編ー

本記事で紹介する本


学問の歴史シリーズを引き続き行っていますが、本日は人文・社会学の中では、どちらかといえば実学に近い、法学、経済学、政治学の歴史の本を紹介します

理工系出身の方でも、毎日ニュースをチェックして、政治や経済の情報を収集しているかと思います。一方で、理工系のカリキュラムには、法学、経済学、政治学がない場合も多いのではないのでしょうか?最新の情報を知ることである程度の現状把握は出来ますが、一方で、これらの学問の基礎を抑えることで、より深く政治と経済の情勢を理解することが出来ます。

というわけで、本日は法学、経済学、政治学の歴史の本を紹介したいと思います。基本的に紹介するのは、学問としての思想の本を中心に紹介するので、現在の法律、経済、政治の制度や仕組みについて知りたい方は、別途、本を参照すべきだと思います。一方で、思想を知ることは本質を理解することにつながる、と思います。

    目次
    ・増補新版 法とは何か 長谷部 恭男
    ・経済学の歴史 根井 雅弘
    ・やりなおす経済史 本当はよくわかっていない人の2時間で読む教養入門 蔭山 克秀
    ・西洋政治思想史 宇野 重規

増補新版 法とは何か 長谷部 恭男


前提知識:なし
キーワード:法思想史

早稲田大学法学学術院教授で教鞭を取られており、東大の名誉教授でもある長谷部先生の本です。六法全書の六法とは、憲法、民法、商法、刑法、民事訴訟法、刑事訴訟法です。長谷部先生のご専門はその中の憲法です。タイトル通りですが、法とは何か?、という観点から過去の思想家の考えを簡潔明瞭にまとめた本です。特に、法と道徳の違いは何か?、という部分に主眼を置いています。ホッブズ、ロック、ルソー、カント、ケルゼン、ハートといった著名な法思想家についてまとめてあります。星の王子様などからの引用を用いて説明したりと、法学について知識のない方でも理解できる内容となっています。

経済学の歴史 根井 雅弘


前提知識:基本的な経済の考え方
キーワード:経済学史

著者の根井先生は京大教授で、経済思想、社会思想史がご専門です。ケネーの重農主義から、国富論のスミス、マルクス、メンガー、ケインズ、シュンペーターなど、主要な12人を取り上げて、経済思想の歴史的な流れを解説する本となっています。学者が読んでも参考になるような内容なため、少しレベルは高めですが、一読すれば経済学の歴史的な流れと考え方が分かるかと思います。各人物について、その人の経歴が詳しく書かれているので、どのような生い立ちからその人物の思想が形成されたか?も考えることが出来る点が、この本の面白さだと思います。資本主義と社会主義の対立がどのような思想から起こったか?を考えるのに適した本だと思います。

やりなおす経済史―――本当はよくわかっていない人の2時間で読む教養入門 蔭山 克秀


前提知識:歴史の基礎知識
キーワード:経済史、戦後史

哲学の入門書戦後史の本で紹介した 代ゼミ講師の蔭山先生の本です。以前紹介した本と同様に、流石の塾講師で、明瞭簡潔に説明されています。世界史を経済学的な視点から見たらどう見えるか?というテーマで書かれた本で、世界史の新たな視点として非常に面白いです。思想史というよりは、実際に起こった時事についての解説なので、ニュースの見方を勉強するうえでは、こちらの本が適しているのではないかと思います。ちなみに、2時間で読むと書いてありますが、ちゃんと読むと少なくとも半日はかかりますが、半日かけても読む価値はあるかとも思います。

西洋政治思想史 宇野 重規


前提知識:なし
キーワード:政治思想史

著者の宇野先生は、東京大学社会科学研究所の教授です。ご専門は、政治思想史、政治哲学です。 こちらもタイトル通りで、西洋の政治思想を中心に、政治思想の歴史を概観できる本となっています。古代ギリシャの都市国家アテネイのポリスから始まって、アリストテレス、トマスアクィナス、マキアヴェリ、ロック、モンテスキューなど、主要人物の思想について、簡潔にまとめてあります。民主主義、共和主義などの基礎概念も抑えることができる本となっています。無駄がなくコンパクトに各思想と主要人物が抑えられており、非常に読みやすいです。
本記事で紹介した本


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